共犯関係

World map

あ、と気づけば更新できてないということで書きますよと。

大飯原発再稼働が決まり、GE日立の原子炉がリトアニアへ輸出されることが決まったとの報道がされるなど、ちゃくちゃくと原子力産業は元の活況を取り戻しつつあります。
日立、リトアニアの原発建設受注 福島事故後の輸出1号

そもそも原子炉って、自動車やテレビのように購入するものではないけれど、炉の形式やメーカーによって仕組みが違ったりします。
日本の場合は、沸騰水型原子炉BWRと加圧水型原子炉PWRとのほぼ二つの形式で、再稼働が決まった大飯原発はPWR、事故を起こした福島第一原発の主たる型式であるBWRとはことなります。で、つくってる会社もどうやら違うらしいぞ、、、ということで原子炉つくってるのどこよ?を調べてみます。こちらの資料が詳しい。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo07/siryo2-4.pdf

日本においては、日立、東芝、三菱重工の3社が主たるベンダーです。が、1990年代以降、全体的に合弁統合が進んでいていろいろな変遷がある模様。

まず、日立は米国のGE(General Electric)と経営資本を融合して、日本法人としては日立GEニュークリア・エナジー社があります。日立がおよそ8割、GE社がおよそ2割の株主となっています。また、アメリカとカナダでは、ややこしいんですが、GE Hitachi Nuclera Energy という会社があり、こちらは日立が4割でGEが6割の出資比率だそうです。この連合はBWRの設計製造を行っています。
日立GEニュークリア・エナジー株式会社
Nuclear Services – Power Plant Performance Services | GE Energy

次に、東芝はWH社(Westinghouse)を買収し、グループ会社化している状態。ただ、Westinghouseという会社はなくて、原子力部門の会社はWestinghouse Electric Companyという名前で、東芝の子会社となり、家電などはブランドとして存続しているだけであんまり関係ない、、、というなんともややこしい状態になってます。東芝はBWRをやっていましたが、WH社を買収することで加圧水型の原子炉にも対象をひろげています。

三菱重工は、PWRを手がけていますが、そもそもWH社のPWR技術を導入したもの、らしい。そこから独自に歩みつつも、最近ではフランスのAREVA社とATMEAという合弁会社をつくり共同開発を行っているらしい。
ATMEA Joint Venture – Home
areva.com – AREVA

日本ではおおよそ3社で原子炉をつくっているといえる状態です。しかしながら、すでにいくつかの海外のメーカーも出てきましたが、海外にも当然原子炉メーカーは存在します。次に、各国の原子炉メーカーを見てみます。

まず、米国から。米国は先ほどでてきたWH,GE以外にも、バブコック・アンド・ウィルコック社が原子炉メーカーとして存在しています。しかしながら、現在では発電用のプラント製造は行っていないそうです。どちらかというと、原子力船や原子力空母、原子力潜水艦といった艦艇のPWR原子炉をつくっているような会社となります。webを見ると、どかーんと原子力空母が搭乗します。
The Babcock & Wilcox Company

フランスには、先ほどのAREVA社があります。AREVA社はまたややこしいのですが、Framatomというフランスの会社があって、これがフランスの原子力政策によって、Cogemaというウラン採掘と燃料製造をしていた会社とを合わせて持ち株会社とした組織、ということになります。

ロシアは、アトムエネルゴプロム(Atomenergoprom)という会社が原子力発電所製造をおこなっているらしい。こちらも原子炉製造、核燃料製造、運転事業などの会社を含む持ち株会社だそうです。ちなみに、ロシア型の原子炉として、VVERというのがあるらしい。
ロシアの原子力発電開発 (14-06-01-02) – ATOMICA –
nuclear energy ? russian atomic energy complex ? home

ドイツには、シーメンス(SIMENS)という重電会社がありますが、かつては原子力発電所を製造していました。しかしながら、現在では事業をフランスのFlamatomに譲渡して、現在は製造は行っていない、という状況だそうです。

他にも、カナダ、中国、インド、韓国、イギリス、スウェーデンなどに原子炉プラントメーカーがあるそうです。

で、これを調べる過程で面白いなとおもったのは、原子炉プラントメーカーといっても、部品は関連の企業から入手しているのであって、独自でつくっているわけでもない、ということ。そして、原子炉の重要部品の原子炉格納容器や圧力容器の世界的シェアを占めているのが日本製鋼所という企業だということ。この会社は、刀鍛冶工房があるという、根っからの鍛造メーカーなんだそうです。昔の戦艦大和の主砲をつくったのもこの製鋼所だそうで、男の子としてはムネアツなのですが。。。この会社は、現用戦車の主砲なんかもつくってるそうです。この会社がなかったら世界の原子炉はつくれないかもしれないという重要企業なわけです。
JSW日本製鋼所:トップページ
日本製鋼所:世界の原発が頼る「刀匠」の魂?名刀の鋼技術で市場独占 – Bloomberg

さて、以上をふまえて考えたことですが、原子炉製造について、日本企業だけ勝手に手を引けない構造に既になってしまっている構造、原子炉の輸出という策略が世界で着々と進んでいるということ、そして、原子力共犯関係です。

まず、日本国内においてはおそらく今後原発から距離を置く世論になると考えていますが、企業の論理として原子力事業をおいそれと捨てる訳にもいかない。例えば、GEと日立との関係において、日立がやらないといってもGEがやりたいといったら、仕方ないやるか、という事にならざるを得ないだろうと考える訳です。日立GEのような資本比率であれば日立の考えが通りますが、GE hitachi(あーややこしい)の場合はGEの方が発言権が強く、推進せざるを得ない訳です。このように、企業体は日本固有の世論や政策とは別個の次元で行動するので、原子力プラント製造や輸出などの施策は止めることができないのではなかろうかと考える訳です。

原子力の輸出という策略については、原子炉メーカだけでは議論はできないのですが、Al Goreが温室効果ガスや地球温暖化、二酸化炭素排出権といった環境問題の提起映画にしたりTED(今日やってましたね、TED)というイベントで表明して一躍有名になりました。その結果、温室効果ガス削減のための原子力、という位置づけが登場。もちろん、これはAl Goreから直接提起されていた訳ではありません。が、これが2006年のことなのですが、今回調べた企業群はこのタイミングを中心として企業の統合が加速しました。その後ICPPのデータ改ざんといった事実も明らかになり、原子力を推進したい勢力の一大プロパガンダキャンペーンであったのではないか、と勘ぐりたくもなります。
Al Gore on averting climate crisis | Video on TED.com
最後に、経済発展著しいインド・中国をはじめ東南アジア各国、そして、東欧諸国やラテンアメリカなど、地域によって事情は異なるのですが、原発を欲している国や地域はやはり存在しています。それらニーズに応えるのは企業として当たり前。ではあるのですが、例えば今回輸出が決まったリトアニアについてはロシアへのエネルギー依存に対する恐怖というのが原発を欲する理由の一つだと思います。これは、一時期ロシアがヨーロッパ向けのガスを止めたことがあって、エネルギー依存をしているといつ首根っこつかまれるかわからないという恐怖体験をしたのでは。なので、ロシアの息のかかってない西側の原子炉導入をしたい、というのが心理として想像できます。でも、原子力売り込みとう目的で政府や世界の企業、利益団体が結託していたと過程すると、ちょっとした共犯関係を構築しているのでは無かろうか、、、などと妄想する事が可能。。。という恐ろしさ。
ロシア・ウクライナガス紛争 – Wikipedia

さて、以上をふまえて、じゃあ日本はどうなの?を考えると、昨日の官邸前のデモもありましたが、そろそろ国民不在は勘弁してくれというのが本音。世界にたいしても、原子力が事故を起こすようなことに加担して共犯になるのは嫌だというのが素朴な所感。だからこそ、やるなら国際関係の中に原子力というビジネスを置かずに、事故をふまえた原子力に対する理念を正々堂々うちだすべきだと考えます。それはおそらく、対放射能汚染技術や、最終処分技術といった、使ったあとの100年200年、数万年をふまえた技術を作り出す、という姿勢になると思います。

そのような取り組みに日本の企業群が乗り出す事ができれば、いいのになぁ!と。海外の企業は怒るかもしれないけれど、それだったら私、日本企業と共犯になりたいものです。


日本製鋼所の記載がある、防衛産業に関する本。著者は女性のかた。。。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です