先日(といってももう数週間前ですが)、「100,000万年後の安全」という映画を観に行きました。
内容はというと、フィンランドで世界で最初につくられることが決まった、地中深くにつくられるオンカロ(ONKALO)と呼ばれる放射性廃棄物の最終処分場についてのドキュメンタリー作品です。
現在の状況としては、東電事故の収束はまだで、事故に伴う放射性廃棄物の処理はまだまだ先きの話ではあります。
一方で、そもそも現在運転している原子力発電所では、核燃料が燃やされて高レベル放射性廃棄物は生成され続けています。経済的に無害化することは、現在のところ、おそらく数百年先でもほぼ不可能といわれています。
つまり、いずれにせよ出来てしまった放射性廃棄物は何らかのカタチで安全に処理をしなければならないのは、合理的な帰結となります。
原子力発電所を存続させるにせよ、廃止するにせよ、出てくるゴミを処理しなければならないというわけです。
そのため、各国はその処分方法を検討しているのですが、日本についてはまだ処分する場所やらが決まっていません。フィンランドについては、最終処分の方法を決めて、立法や建設やらを進めています。その処分場はオンカロと呼ばれています。
前置きがながいですが、映画は処分方法の検討から、このオンカロの選定、今後の運営方針について、当事者にインタビューを行いつつ、また、実際のオンカロと呼ばれる地下坑道の映像を交えた構成になっています。
(↓こちらはそのオンカロを運営している、ポシヴァ社のオンカロ紹介ビデオ)
単に映像だけ見ていると、きれいな映像で構成されたSF映画のようなモノなのですが、実際に10万年というタイムスパンで本気でどう処理するのかを当事者が考えているというところが衝撃です。
ちなみに、ぼやっと処理方法を考えると、鉄腕アトムではないですが、太陽に打ち込んじゃえば?という案もあったそうなのです。が、打ち上げに失敗して放射性物質が飛散するリスクはおかせない、という評価になったりしたそうです。故に、いろいろ考えて、やっぱり穏当な処理方法は安定した地殻に永久に保管することだという事になるそうです。
デザインという観点からは、数千年、数万年先の人類の事を考えた結果、危険物の存在をどのように伝達するのか?ということが議論されているという事です。これは、昔読んだデザインの本で、そういう事を考える人たちがいて、人が元型としてもつ危険さや不快さを表現するランドスケープでそれを伝えるという事例を読んだ事があり、これの事かとはたと膝を打ちました。
しかしながら、さらにタイムスパンを考えると、地球は数万年周期で氷河期が訪れ、地表の構造物は浸食されたりする可能性がある、だったら、処分後は人類に忘れ去られてしまった方がいいんじゃないか、という考えもあるそうです。
こう考えていくと、もう、どうしていいのかというと全く断言はできなくなってしまう、、、ということにも。
要は、地中に埋まってしまった状態では、自然環境にさらされても相当大丈夫だと判断できるが、将来の人類がどのように振る舞うのかは予想がつかない、という事です。
例として比較すると興味深いのは、エジプトのピラミッドにしたって、ナスカの地上絵にしたって、お墓だったり宗教的なシンボルであったりと現在では解釈されています。ところが、想像をたくましくして、実は危険物質を閉じ込めたりしたところのサインだったりしたら、、、。でも人間は好奇心にかられて掘っちゃいますよね、と。
結論としては、やっちゃった以上、革新的技術や物理原理が登場しない限りは、放射製廃棄物の持つ危険性の薄ら寒さを常に背中に感じながら過ごさざるを得ない、というところです。
詳しくは映画を見ていただければと。映像はトテモきれいです。
さて、ではということで日本にもどりますと、日本の場合も最終処分についての検討や技術開発は行われています。
どういう事があるのだろうかと調べてみますと、工学的にどう挙動するのか、それを調べる試験施設が北海道の幌延というところあるそうです。
現在ところ、処理方法しては
1)放射性物質をガラスと混ぜて固めるガラス固化体を生成
2)ガラス固化体をオーバーパックと呼ばれる金属製容器に封入
3)オーバーパックを地中に安定に保管するために、水を遮る緩衝剤で覆う
という処置を施して地中に埋めるそうです。
実際には、実際の放射製廃棄物は使わずに、これらバリア群の性能を調べる研究がなされている、はずです。
土木/建築分野で、デザインからこの分野に行った人はいるのだろうか?と思いつつ、これもデザインいるのかもと考えてもみます。
等と、調べモノの日々は続きます。。。
20120216追記:映画がiTunesでみれるようになりました。
20120216追記追記: amazonにもあった!
幌延深地層研究計画 平成23年度調査研究計画(PDFです)
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