大飯高浜マンション

高浜
海から眺める原発

ニッポンの夏、ということで、仕事がお休みのかたがいらっしゃるかと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?

とはいえ、そんなところで原子力関連のモノゴトを個人的興味に基づいて調べごと。今回は外回りです。ちょっと遠いぞということで行く機会を逸していた、福井県の大飯原発、高浜原発あたりに行ってきました。

以前、敦賀半島を一周し、敦賀原発、美浜原発、高速増殖炉もんじゅはどこにあるの?を調べてみましたが、今回はより西のほう、京都府に近い原発です。

大飯原発

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場所はこちらです。再稼働に揺れ、盛んに報道をされていて現在どうなっているんだろう?!とドキドキしつつ、実際どうなっているかは調べずに行ってみました。

大飯
大飯原発前は静かなもんです

で、結論からいくと、だれもいない。。。稼働中だからこそ監視する、という人がいるのかな?とも思ったのですが、警備の方がいらっしゃるのみ。附属の広報施設があるのですが、これも臨時休館でとにかく敷地内には立ち入れない。周辺の山道ですら警備の方がいらっしゃってどうやら立ち入れないなぁというかたちでした。

また、行ってわかったのは、陸地からアプローチしても大飯原発の原子炉建屋は外部からは全く見えない。ということでした。少し離れた入り江の海水浴場からも、伺い知る事は困難。

また、あらためて地図を見ると陸からのアプローチはトンネルを抜けないと行けないようなつくりになっています。一体どうやって建設したんだろうか、と過去の建築工程表をさかのぼりたくなる気持ちでいっぱいです。

高浜原発

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大飯原発から次は高浜原発へ。地図はこちら。見ていただくとわかるのですが、入り江を挟んで西の反対側、直線距離にすると10kmほど離れたところにあります。ここも見づらいのかな、とおもったのですが、以前の敦賀原発に続く衝撃。

高浜橋の上
テンパってますが取水口の上を走ってます。

取水口の上の橋を通れます!一般道から直線距離で100mほどでしょうか、原子炉建屋を視認できます。

また、ちょっと離れた停車場からも発電所が見えるので、原子炉マニア?にはかなりぐっとくるものがあるのではないでしょうか。直接関係はないのでしょうけれど、保税用のエリアのある湾口もあるので、僻地感がそれほど無いです。身近に感じた方がいいのかわるいのかはわかりませんが、高浜原発は巨大プラントを間近に感じるにはうってつけな場所だなぁと感じた次第です。

門の前
高浜の前

ちなみに、こちらは附属するような広報施設が近くにはなく、純粋に発電プラントとして立地しています。

ここに移動するにあって、道路を眺めていても、やはり放射線量が確認できるような装置は一カ所しか見かけなかったです。見落としがあるのかもしれないですがやはりちょっと少ないように思います。

思うところ
そして、やはり今回も思うのは、原子炉までの交通アクセス。道が一本しかないために、緊急時の移動の際に道がつぶれたら終わるぞ、という感想。そのため、海上からのアクセスはどうなるかと考えます。高浜原発の場合、比較的大きな港湾施設がありますが、大飯原発は所内の港湾施設のみ。
google map の航空写真を見ると、ヘリポートとして利用できそうな空き地が大飯原発には確認できますが、一方高浜原発はヘリがおりれそうな空き地がちょっと離れたところにあります。緊急時のアクセスが不安で仕方が無いです。

ちなみに、緊急時というのは、なにも自然災害に起因する訳ではなく、ある意味ではアクセスが良く、また人のいないところで海に開けているがために、テロ行為や犯罪が行われた場合の警察力や防衛力の行使が困難であるぞ、ということもあります。

福島第一の場合は、開けた土地に立地しているために、南北そして西から多様にアクセスができますが、若狭湾に面した原発群に関しては、本当に片側1車線の道があるのみ。大量の車両や重機を一気に陸上移送することが困難だろうと推察されます。

ミスリード
で、じゃ重機はと重機と調べ物をしていたところ、奇妙な写真を見つけたので、ご紹介。関西電力からリリースされている資料なんですが、写真になにか違和感。

こちらは、福島第一原子力発電所事故を踏まえたシビアアクシデントへの対応に関する措置に係る実施状況(概要)という資料。事故の際にがれきが散乱して作業が難航した事から、ホイールローダという重機を配備した、という報告書。写真は美浜発電所の例とあります。
http://www.kepco.co.jp/pressre/2011/0614-1j.html
http://www.kepco.co.jp/pressre/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/06/14/0614_1j_01.pdf

で、こちらは、高浜発電所2号機の安全性について(安全確保対策とストレステスト評価) [PDF 2.75MB]という資料。こちらもホイールローダーの記載があるのですが、どこに配備されている写真なのかは記載がない。高浜原発の資料なので、高浜原発での写真かと思ってしまうのですがそうではなことに。
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/0803-1j.html
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0803_1j_02.pdf

関電資料に同じ写真
あれ?

意図的なのかそれともちょっとしたミスなのかちょっと判断ができないですが、こういう資料を発見してしまうと、本当に安全対策を実施したのか、疑問に感じざるを得ないところです。

で?
こういった資料を発見し、また、原発敷地内で何が行われているのか窺い知れない以上、疑心暗鬼にかられるような思いでもあります。

ちなみに、ちょっと行ったところにある海上自衛隊の舞鶴基地では、見学も可能ですし、護衛艦を間近で見る事もできちゃいます。
原発を公共財として位置づけるならば、発電所公開といったことも実施する必要があるのではと思います。もちろん、だからといって私自身が原発大賛成になるかというとそういうことも無いんですが、実際どうなってるの?という疑問に対する答えが出ることが無いのがなんともぎこちなさがあります。

原発は、一度つくってしまった以上、稼働するにせよ、停止するにせよ、廃炉するにせよ、いずれにせよ立地している地域には、これからやっぱり何十年何百年とあり続ける事に変わりが無いです。ご近所付き合いと一緒で好き嫌いに関わらず、お付き合いしていく必要があります。
で、今回の結論としては、原発が核廃棄物の処理がままならないことからトイレの無いマンションと呼ばれていますが、お隣誰が住んでるかわからないマンションになってるのが原発の現状かと。


NO NUKES 2012, UST, Logo

NO NUKES 2012 2日目に行ってきたよっと。そもそもイベントがあるとは直前までしりませんでしたが、デジステ平野さんのtweetで告知あり、これは行かねばと直感に従い幕張メッセに。NO NUKES 2012は7月7日と8日に幕張メッセで行われた脱原発のメッセージ発信のイベントです。

前日は渋谷で反原発デモ行進と出くわしていたので、そういう感じなのかな?と思っていましたが、モダンなライブフェスの様相で何とも不思議な感じ。そうそうたる方々がステージでパフォーマンス。

個人的にはacidmanさんが好きなんで、前線での戦い。緩急のある選曲。でも圧巻はやはりBRAHMANさん。Thoshi Lowさんは真剣に地震や原発の事考えているのだなという事が伝わってくるパフォーマンスとMCで真っ昼間ですが大盛り上がり(だったはず、こちらも前線にいたので後ろはよくわからず)。カッコウィイ。思わず手を合わせてしまう始末と衝撃。終わったあともブースで黙々と協力をあおぐパフォーマンスをされていました。合掌と後悔と。ああ、進んでらっしゃる!

 

以前、サヘル・ローズさんや伊勢崎さんの対談とかで思ったのですが、チャーミングに世の中を変えようという考えかたに通ずるとおもうのですが、なんだかもじもじするんではなく、すかっとしたイベントだなぁとおもい、参加して本当によかったと告知をしていただいたことに感謝。

さて、もどってから、USTでも中継をしていたということで見てみると、双葉町の井戸川町長と映画をとった舩橋監督とのトークライブがあるということで見てみると、被爆量検査が十分に受けられないとか、根拠の不十分な言論が流布されているとかといった、全然しらなかったことが伝えられていました。こちらも知らないことで、驚愕。こういう事を同時に企画してできるということに、このイベントのすごさを感じた次第です。知らないではなくて、知っていかなければならんぞこれはという思いを新たにしました。

話は前後しますが、やはりちょっとライブイベントを通じて、デザインという領域においてこのままではいかん!と思った事が発起人の一人である坂本龍一さんのYMOのパフォーマンスでありました。ステージ後方のスクリーンに東京電力のロゴマークが登場した瞬間に歓声があがりました。現在、東京電力というのはそはある意味では憎むべき対象となってしまっているということはあるなと感じざるを得ないです。

法人としての東京電力の対応は問われるべきであるし、非難されるべきだと考えます。しかしながら、働いている人全員を非難したり、対話するチャンネルを閉じてしまうことは問題解決にならないとおもいます。なので、拒絶するとか排除するではなく、冷静に批判したり対話をするというスタンスは忘れてはならないと思います。

また、ロゴデザインはグラフィックデザイン会では高名な永井一正さん。現在、東京電力のロゴは災禍のシンボルのように扱われるのは心外であろうとおもいます。しかしながら、大きな企業や組織のロゴデザインというのは、良いにせよ悪いにせよ、そのような責任を必然的に負ってしまうということです。カタチという一目で理解できてしまうコミュニケーション形態である以上、世論によってシンボルの意味するものが変わってしまうことを全く理解した瞬間でした。

故にデザインは恐ろしいです。それだからこそ、デザイナーはデザイン対象と真っ向勝負しなければならないと背筋が凍りつつ伸びる次第です。その姿勢、真剣さとか、しなやかさとかチャーミングさとか、そういうもの。USTの平野さんをみると、ほんと伝わります。ぜひ、ご覧ください!

Video streaming by Ustream


共犯関係

World map

あ、と気づけば更新できてないということで書きますよと。

大飯原発再稼働が決まり、GE日立の原子炉がリトアニアへ輸出されることが決まったとの報道がされるなど、ちゃくちゃくと原子力産業は元の活況を取り戻しつつあります。
日立、リトアニアの原発建設受注 福島事故後の輸出1号

そもそも原子炉って、自動車やテレビのように購入するものではないけれど、炉の形式やメーカーによって仕組みが違ったりします。
日本の場合は、沸騰水型原子炉BWRと加圧水型原子炉PWRとのほぼ二つの形式で、再稼働が決まった大飯原発はPWR、事故を起こした福島第一原発の主たる型式であるBWRとはことなります。で、つくってる会社もどうやら違うらしいぞ、、、ということで原子炉つくってるのどこよ?を調べてみます。こちらの資料が詳しい。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo07/siryo2-4.pdf

日本においては、日立、東芝、三菱重工の3社が主たるベンダーです。が、1990年代以降、全体的に合弁統合が進んでいていろいろな変遷がある模様。

まず、日立は米国のGE(General Electric)と経営資本を融合して、日本法人としては日立GEニュークリア・エナジー社があります。日立がおよそ8割、GE社がおよそ2割の株主となっています。また、アメリカとカナダでは、ややこしいんですが、GE Hitachi Nuclera Energy という会社があり、こちらは日立が4割でGEが6割の出資比率だそうです。この連合はBWRの設計製造を行っています。
日立GEニュークリア・エナジー株式会社
Nuclear Services – Power Plant Performance Services | GE Energy

次に、東芝はWH社(Westinghouse)を買収し、グループ会社化している状態。ただ、Westinghouseという会社はなくて、原子力部門の会社はWestinghouse Electric Companyという名前で、東芝の子会社となり、家電などはブランドとして存続しているだけであんまり関係ない、、、というなんともややこしい状態になってます。東芝はBWRをやっていましたが、WH社を買収することで加圧水型の原子炉にも対象をひろげています。

三菱重工は、PWRを手がけていますが、そもそもWH社のPWR技術を導入したもの、らしい。そこから独自に歩みつつも、最近ではフランスのAREVA社とATMEAという合弁会社をつくり共同開発を行っているらしい。
ATMEA Joint Venture – Home
areva.com – AREVA

日本ではおおよそ3社で原子炉をつくっているといえる状態です。しかしながら、すでにいくつかの海外のメーカーも出てきましたが、海外にも当然原子炉メーカーは存在します。次に、各国の原子炉メーカーを見てみます。

まず、米国から。米国は先ほどでてきたWH,GE以外にも、バブコック・アンド・ウィルコック社が原子炉メーカーとして存在しています。しかしながら、現在では発電用のプラント製造は行っていないそうです。どちらかというと、原子力船や原子力空母、原子力潜水艦といった艦艇のPWR原子炉をつくっているような会社となります。webを見ると、どかーんと原子力空母が搭乗します。
The Babcock & Wilcox Company

フランスには、先ほどのAREVA社があります。AREVA社はまたややこしいのですが、Framatomというフランスの会社があって、これがフランスの原子力政策によって、Cogemaというウラン採掘と燃料製造をしていた会社とを合わせて持ち株会社とした組織、ということになります。

ロシアは、アトムエネルゴプロム(Atomenergoprom)という会社が原子力発電所製造をおこなっているらしい。こちらも原子炉製造、核燃料製造、運転事業などの会社を含む持ち株会社だそうです。ちなみに、ロシア型の原子炉として、VVERというのがあるらしい。
ロシアの原子力発電開発 (14-06-01-02) – ATOMICA –
nuclear energy ? russian atomic energy complex ? home

ドイツには、シーメンス(SIMENS)という重電会社がありますが、かつては原子力発電所を製造していました。しかしながら、現在では事業をフランスのFlamatomに譲渡して、現在は製造は行っていない、という状況だそうです。

他にも、カナダ、中国、インド、韓国、イギリス、スウェーデンなどに原子炉プラントメーカーがあるそうです。

で、これを調べる過程で面白いなとおもったのは、原子炉プラントメーカーといっても、部品は関連の企業から入手しているのであって、独自でつくっているわけでもない、ということ。そして、原子炉の重要部品の原子炉格納容器や圧力容器の世界的シェアを占めているのが日本製鋼所という企業だということ。この会社は、刀鍛冶工房があるという、根っからの鍛造メーカーなんだそうです。昔の戦艦大和の主砲をつくったのもこの製鋼所だそうで、男の子としてはムネアツなのですが。。。この会社は、現用戦車の主砲なんかもつくってるそうです。この会社がなかったら世界の原子炉はつくれないかもしれないという重要企業なわけです。
JSW日本製鋼所:トップページ
日本製鋼所:世界の原発が頼る「刀匠」の魂?名刀の鋼技術で市場独占 – Bloomberg

さて、以上をふまえて考えたことですが、原子炉製造について、日本企業だけ勝手に手を引けない構造に既になってしまっている構造、原子炉の輸出という策略が世界で着々と進んでいるということ、そして、原子力共犯関係です。

まず、日本国内においてはおそらく今後原発から距離を置く世論になると考えていますが、企業の論理として原子力事業をおいそれと捨てる訳にもいかない。例えば、GEと日立との関係において、日立がやらないといってもGEがやりたいといったら、仕方ないやるか、という事にならざるを得ないだろうと考える訳です。日立GEのような資本比率であれば日立の考えが通りますが、GE hitachi(あーややこしい)の場合はGEの方が発言権が強く、推進せざるを得ない訳です。このように、企業体は日本固有の世論や政策とは別個の次元で行動するので、原子力プラント製造や輸出などの施策は止めることができないのではなかろうかと考える訳です。

原子力の輸出という策略については、原子炉メーカだけでは議論はできないのですが、Al Goreが温室効果ガスや地球温暖化、二酸化炭素排出権といった環境問題の提起映画にしたりTED(今日やってましたね、TED)というイベントで表明して一躍有名になりました。その結果、温室効果ガス削減のための原子力、という位置づけが登場。もちろん、これはAl Goreから直接提起されていた訳ではありません。が、これが2006年のことなのですが、今回調べた企業群はこのタイミングを中心として企業の統合が加速しました。その後ICPPのデータ改ざんといった事実も明らかになり、原子力を推進したい勢力の一大プロパガンダキャンペーンであったのではないか、と勘ぐりたくもなります。
Al Gore on averting climate crisis | Video on TED.com
最後に、経済発展著しいインド・中国をはじめ東南アジア各国、そして、東欧諸国やラテンアメリカなど、地域によって事情は異なるのですが、原発を欲している国や地域はやはり存在しています。それらニーズに応えるのは企業として当たり前。ではあるのですが、例えば今回輸出が決まったリトアニアについてはロシアへのエネルギー依存に対する恐怖というのが原発を欲する理由の一つだと思います。これは、一時期ロシアがヨーロッパ向けのガスを止めたことがあって、エネルギー依存をしているといつ首根っこつかまれるかわからないという恐怖体験をしたのでは。なので、ロシアの息のかかってない西側の原子炉導入をしたい、というのが心理として想像できます。でも、原子力売り込みとう目的で政府や世界の企業、利益団体が結託していたと過程すると、ちょっとした共犯関係を構築しているのでは無かろうか、、、などと妄想する事が可能。。。という恐ろしさ。
ロシア・ウクライナガス紛争 – Wikipedia

さて、以上をふまえて、じゃあ日本はどうなの?を考えると、昨日の官邸前のデモもありましたが、そろそろ国民不在は勘弁してくれというのが本音。世界にたいしても、原子力が事故を起こすようなことに加担して共犯になるのは嫌だというのが素朴な所感。だからこそ、やるなら国際関係の中に原子力というビジネスを置かずに、事故をふまえた原子力に対する理念を正々堂々うちだすべきだと考えます。それはおそらく、対放射能汚染技術や、最終処分技術といった、使ったあとの100年200年、数万年をふまえた技術を作り出す、という姿勢になると思います。

そのような取り組みに日本の企業群が乗り出す事ができれば、いいのになぁ!と。海外の企業は怒るかもしれないけれど、それだったら私、日本企業と共犯になりたいものです。


日本製鋼所の記載がある、防衛産業に関する本。著者は女性のかた。。。