イノベーションとデザインについて。
イノベーションとは、オーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターによって提起された概念であり、新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるというもの。
日本では技術革新という狭義の意味で使われることがありますが、本来はもっと公汎な概念です。
つまり、全く新しい、ということでなくても、やり方が新しくてもそれはイノベーションであるといえます。
デザインには、何らかの新しい価値づくりを行う力があるとするならば、モノのデザインだけではなく、上記の新しい価値づくりに資するような取り組みは、ある意味ではデザインだよね、という見方もできるかと思います。
ここで、もう一方で、デザインの訳語として新資源ということばが中国方面でつかわれます。どういうことかというと、いわゆる資源というのは、地球から与えられる天然ゆらいの産物のことをさします。
ではここでいう新資源とは何かというと、知識生産、という概念に近いです。人間が考えた結果、あたらしいアイディアを得るということ。地球にかわって、人間のグリア細胞やらのケミカルな電位差による揺らぎを資源とするという概念です。
この場合、技術的には何ら新しいことはないかもしれません。例えば、あまりいい例ではないかもしれませんが、グラフィックデザインなどは、その技術は全く新しくなくても、コンテンツの斬新さによって新たな価値が得られたということができます。
今後、同様に工業製品についても、新しい機能を新しい機構や素材で実現するのではなく、ありモノの機能を組み合わせることで新しい価値付けができる、というアプローチがどんどんとられていくのではないかと推測できます。
最初のイノベーションの概念から、この新資源へといたる、人間の知恵やアイディアをどのように得るのか、その思考形態は、ある意味ではデザイン的な思考方法であると考えます。
そして、その思考形態はどのようなものか、参照となるのが、レヴィ・ストロースの野生の思考にあるような、ブリコラージュ=器用人の仕事と呼ばれるようなものではないかと、思う訳です。
まあ、器用貧乏にならないように注意しましょう。