写真について考えてました。で、お題はビジュアライゼーション。ビジュアライゼーションは(プロダクト)デザインでは重要。つまり、見える化です。
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デザインにおける見える化には、いくつか目的があります。デザイン初期段階でのアイディアだしやスペック抽出のための、デザイナ自身が思考を外部化して客観視するためのイメージ。
もう一つは、デザイン事象を伝達するためのビジュアライゼーション。具体的には、実際のモノのように見せるレンダリングというのがあります。
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まあ、実際には、デザインの特徴を示せばよいので、実際のモノのように見えるっていっても、いろいろな段階があるのですが。
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で、なにを思ったかっていうと、カメラはどんどんデジタルになっているけれど、デザインのビジュアライゼーションはどうかっていうと、ちょっと違うなーということ。
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昔、写真をとるのにはそれなりの技能が必要であった。なので、職業写真家が存在した訳ですが、カメラに測光装置がついたり、自動巻き上げになったり、オートフォーカスになったりと、どんどん自動化されていきました。その結果、カメラの操作自体に習熟することなく、写真を撮影できるようになった。つまり、カメラの操作ができるからってプロとはいえなくなってきてしまった。
ただ、フィルムを使っている以上は、その現像と焼き付けは、一部の人をのぞいてお店に行ったりとプロの出番があった。(その一部の人をしばらくやっていたのですが)。それなりの職能がないと、この仕事もできない。
そこで、カメラがデジタル化したことで、このフィルム現像といった後処理についても、プロの力を借りる必要がなくなってしまった。
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プロであるという条件が、間違いなく機器を操作できるということではなく、写真そのものの価値という段階に至ったといえるでしょう。
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一方、プロダクトデザインの分野ではどうだろうか。プロダクトデザインと一言にいってもいろいろあるけれど、絵に関していうと、スケッチの方法は、今も昔もあまり変わっていない。紙にペンで線を引けばよい。逆にいうと、デザインの初期のスケッチというところに関していうと、ものすごく敷居が低い。ある意味では、だれもができることだ。
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一方レンダリングの技術について、手書きだととたんに難しくなる。フリーハンドで気味の悪くないパースをひくのは、それなりのトレーニングが必要となる。プロフェッショナルとしては、このハードルを越えるの一つ。
そして、色彩については、すごく昔は水彩やアクリル絵の具のように、結構手間のかかる画材を用いていた。それらの色の組み合わせを覚えるというのも、大きなハードル。ただし、この色にかんしては、マーカーを用いて手早く描く技法が開発されたので、今ではそれなりには時間が短くなっている。
グラフィックデザインについても、烏口やらレタリングやらの技術を覚えるのは大変。
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では、技術的進化として、デジタルが導入されているのはどの辺りかというと、まず3次元のイメージを起こすときに、CGで着色やパース絵を描けるようになった。これは、ある意味革新的。身体的な技能によらず、数理によって誰もが本物のようなレンダリングを得ることができるようになった。
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スケッチについてはどうかというと、イラストレータやらペンタブレットを用いてデジタルで線を引くことができるようになった。これは、失敗しても何度でも線が引けるという意味で、革新的といえば革新的。そして何より、いろんな色を自由に選んで着色できるようになってしまった。
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これらからは、職能としてのデザインの技能がどんどん再現性のあるデジタル環境になっていったことで、デザインをやるための敷居は下がっていると言ってもいいのだろう。
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でも、大きく違うのは、デジタルだから万人がデザインを簡単にできるようになったかというとそうではないということ。
写真のように、とりたいものをだれもがきれいに撮影するといったように、デザインもつくりたいものをだれもがきれいにつくれるようになったとはいいがたい。
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もちろん、写真のように撮影したい!というような、つくりたい!という人と比べて圧倒的に少ないってことは当然いえます。だけれども、写真だったらあり得るような、なんかきれいにできちゃいました、っていうデザインはなぜかあり得ないことが多い。
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個人的には、万人のためのデザイン方法っていうのがあったらいいなー、と思う。そうすれば、美しいもので世界があふれるのだろう。
そう考えると、技術によるデザイン支援のよちは、よっぽどたくさん残っていると感じる。
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デザインにおけるオートフォーカス的機能なんてのがあったら、どんなものになるのだろうか?