改正前夜

6月18日,衆議院で臓器移植法の改正案が採決されます.脳死の方から臓器するということです.

日本の臓器移植に関する問題として,

  1. 他国と比べて臓器移植が進まない
  2. 臓器提供の意思を示さなければ臓器摘出ができない.すなわち,脳死の概念などが理解できる年齢でなければいけない.そのため,子供からの臓器提供ができない.

などがあるそうです.さらに,WHOの勧告によって,臓器移植はそれぞれの国で自前せよ,となりそうなこと.アメリカなどで移植を受けるといったことがたびたび報道されますが,それが原則できなくなる可能性があります.これと子供からの臓器摘出と関連します.

これだけではなく.実際には臓器売買といったマーケットの存在も残念ながら否定できません.倫理的問題が常につきまとう問題です.

日本の場合は,大脳,小脳,脳幹のすべての機能が不可逆に廃絶したときに,脳死となります.特異なのはイギリス,脳幹の死,すなわち生命機能が廃絶したら脳死となる脳幹死を採用している点です.夢を見ているのかもしれないじゃないか,,,という人はすなわち死んだことになってしまうという,何とも実利的というか,恐ろしく感じる基準です.逆に,大脳や小脳の機能が失われても,脳幹が生きていれば,それは植物状態となり,日本でも脳死とはなりません.

これら判定基準に,小脳は本質的には関わってないということで,そんなに無視してもいいのか?という疑問を以前研究していたので,この辺りの問題はなかなか難しいと感じます.

どの決議案となっても,臓器移植を進めよう,というバイアスが強化されることに違いはありません.しかしながら,デザインの立場からは,ブリッジでもいいから性能の良い人工臓器が必要なんではないかと感じます.現在,心臓に関しては,移植まで心臓機能を補助するということで,bridge to heartという概念のモノが使われています.

補助人工心臓や人工透析装置など,体から管を出して,体外にある機器に接続するという現状のシステムは,いったんトラブルがおこれば修理や交換が容易というアドバンテージがある一方,体外にあるので自由に動き回れないなど,QOLが低いことは否めません.少なくとも,体表下に埋め込むようにした方が,見ている方としては安心ができるように思うのです.


略語たち

EHR (electronic health record)

PHR (personal health record)

EMR (electronic medical record)

という用語があるそうです。
時代を読む新語辞典

医療の電子化にかかわることで、仕事として非常に関心のある部分ですので、押さえていきたいとおもいます。

先日のレコードで、米国における医療保険について取り上げましたが、米国では、医療情報の管理も民間が行っていたりします。
Google healthというサービスがあり、自分の既往症などを書き込んだり、お医者さんを探したりできるそうです。
日本だったら病院などに大事に抱え込まれていそうな情報が、あっけらかんとWEB上にあったりします。

まだまだ未開な分野でもあり、勝負ができそうな軽輩です。

にしても、、、用語については、略しても分かりにくい、、、。


米大統領経済諮問委員会と医療費の話

報道によると、米大統領経済諮問委員会(CEA)が、医療保険改革の経済効果に関する報告書を発表したとのこと。

医療保険関連費用を年間1.5%押さえることで、GDPの引き上げが可能になるとのこと。

日本の場合なら、国民医療費が下がるのかというイメージになりますが、アメリカの場合はあれっと思うことがあるのでメモを。

マイケル・ムーア監督のSiCKOで有名になりましたが、アメリカでは皆保険制度はないそうです。高齢者と障がい者を対象としたメディケアと低所得者を対象としたメディケイドがあります。

なので、普通の会社員などは、民間の医療保険に入ることとなります。
民間医療保険の場合、医療費の申請が通るとおらないで問題となることがあり、この部分をSiCKOではとりあげられています。

さて、今回のCEAが提唱するのは、連邦政府などの公的な医療保険関連費用のことと思われます。すなわち、民間医療保険はあんまり関係ない(はず)。
よって、医療費を削減することは、メディケアやメディケイドの対象となる人への医療費を削減することになるのではないかと思われます(そんなことないかもしれませんが)。

金融機関には公的資金を投入し事実上国有化したりしてるし、その引き金となったサブプライムローンも低所得者に対する住宅ローン貸し出しが発端となった。

さらに、その低所得者層の医療費すら取り上げようとしているのだから、自由の国というのは恐ろしい国。

薄く広く、米国内から集めた資金を金融機関に集約させていくという仕組みを、医療の分野にまでさらに広げようとしているのではなかろうかと、勝手に想像せざるを得ません。

では、我が国がそれに関係するのかというと、民間医療保険会社にどんどん外資が投入されていますし、簡易保険も民営化によって外資が入ってくるはず。

医療費という生命に関わる資本流通が、海外に向かった金融流通に飲み込まれるならば、不況によって制度に更なる破綻を生じかねません。

報告書よんでも英語の文章ばっかりでたいへんですが、もそっと詳細に読みたいと思います。

(それにしても、報道は報告書の最初の方を日本語に訳しただけじゃないかと、こういう原文にあたるとわかりますねー。メディアリテラシーも身につけなければなりませぬ。)
米国、医療改革でGDP8%増 経済諮問委が報告書

アメリカと日本の医療保険制度(概要)

THE COUNCIL OF ECONOMIC ADVISERS

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