昨日のNHKスペシャルで,ロシアの新興財閥を取り上げた番組を放送していた.
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世界金融危機から波及した,ロシア経済の危機.その危機を乗り切るために,ロシア政府の資金を民間に投入しようという動きがプーチン首相の元で進められた.ロシアの経済発展の結果生まれた,新興財閥は,資金投入先としてリストに載ることこのことが生き残りのために必要となり,その顛末を描いたドキュメンタリーである.
ロシアについては,エネルギー資源を背景として,BRICsの一角として急成長しており,特にかつての大国の一つとして注目していた(といっても,ちょろっと本を読む程度ですが).いわゆる成金も急増しており,たいへんおもしろい状況になってきていたと思う.
プーチンの政策は,国益に適う企業,そして,国の方針に従う企業を優先して資金を投下するというものである.そのため,新興財閥の経営者は,存続をかけて政府にアピールするという構図だ.NHKの番組では,この経済体制を,国家資本主義と読んでいた.確かにそう思う.
日本においては,企業家が政府に働きかけるというのは,利益誘導を目的としていて,企業の存続をかけてまでロビー活動を行っている訳ではないとおもう.そして,企業はある意味では,政府の方針にしたがった,使い古されているが護送船団方式でもあった.
ところが,ロシアの場合,企業の存続をかけて,政府に取り入るという真剣勝負が必要となる.例えば,ある民間企業の社長は,国家権力に捕まり,会社は国有化された.資源を扱っていたために,地政学的なパワーバランスのもとリスキーな商品を扱ってはいるが,国に強制されるというのがまかり通る社会というのは,日本ではちょっと想像できない.さらにいうならば,いまだに生命の危機を感じるようなこともあるだろうと推察される.
では,これら事象が特異なことであるかというと,ちょっとそれは違うと思う.なぜならば,近代の国家間のやり取りは,すべからく経済競争であり,そしてその経済競争は国家の果たしてきた役割は大きかろうということだ.
米国では,毎年信じられないほどの軍事費が費やされる.それが国や国民にとって必要かといえば必要だが,一方で,軍産複合の構造で,国家が主導して巨大な資本を民間企業に投下し,それが巡り巡ってまた国に戻ってくる構造がぼんやりと見える.
エネルギーにしても,開発にあたっては国家間の貿易によってプレゼンスを得るための道具として非常に重要となる.そのために,国家主導で何らかの取組みが行われることも否めない.
このような経済というのは,技術革新による経済変化を誘因することで,経済発展に導くのではなく,資本と資本とのぶつかり合いによる経済競争である.民間が闊達に発案する商品やサービスがおざなりになり,国家が主導する資本の奪い合いの様相を呈してくるのではないかと想像できる.モノづくりの立場からこの状況へは,経済システムの冗長性をたもつ,遊びや非合理といったファクターが欠かせ無くなってくると考える.これには,実は非合理という観点から医療産業が視野に入ってくる,とこれもぼんやりと思うことの一つ.